第19章

翌朝早くに、樋口浅子は目覚めるとすぐに事件担当の警官に連絡を取った。

「樋口さん、本当に藤原美佳さんの責任を追及しないおつもりですか?」警官は事務的に尋ねた。

「はい」樋口浅子の瞳には重みが宿ったが、相澤裕樹のことを思い浮かべると、どこか諦めたような安堵感も混じっていた。

「わかりました。上司に捜査取り下げを伝えておきます」警官は答え、手帳を閉じて立ち去ろうとした。

「ただ、名誉を傷つけた件については追及する権利を留保していることをお伝えください」樋口浅子の声は冷ややかで、断固とした決意が滲んでいた。

藤原美佳はいつも自分に面倒をかけてくる人間だった。かつて相澤裕樹を救ったという過...

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